紫陽花に想う

来むと言ふも
来ぬ時あるを
来じと言ふを
来むとは待たじ
来じと言ふものを
          大伴坂上郎女

 (あなたは来ようと言っても来ない時があるのですもの
  来ないと言うのを、それでもひょっとしたら来られるかも、
  などと頼みに思って待つのはやめておきましょう。来ないと言っているのですもの)
                       『日めくり万葉集』vol.1より



昨年の年の瀬に、大事な人を失う出来事があった。
私の無神経な言葉がきっかけで彼は離れていくことになった。
幾度、謝ったかしれない。ようやく新年を迎える前に許しをもらったけれど、
彼は私を許してはいないのだろう。

何度も謝って許してもらえたけれど、いちいち彼を気にするあまりすっかり
嫌になってしまった。彼の怒りは私の無神経な言葉にあるのだろうけど、
彼が私を傷つけた言葉など考えたことがないのだろう。

それでも私は彼からのメールを待ってしまう。
仕事が多忙で深夜まで残業するからメールしたり話したりすることはできなくなるかもと言ってたのに、メールをくれたり話を聞いてくれた時もあったから。
前に言ってくれた約束を頼りに待っていたりもしたけれど、この頃はすっかり疎遠になってしまったので、頼りにするのはやめておこうと思うことにする。
紫陽花のように彼の心は心変わりしたのかもしれないし。

早くこの物思いから解放されたい。