大量硬貨入金手数料

どういう心境の変化が起こったのか、今となっては忘れてしまったが、私は分不相応にデカいブタの貯金箱を持っていて、これを小銭で満たしてやろうと思い、財布に小銭が増えるとブタに入れ続けていた。

 

 

この豚が私の手元に来たのは、バザーですら買い手がつかなかったからだ。
そもそも、こんなでかい貯金箱にちまちまお金を入れたところで、何年でいっぱいにできるかなんて途方もない気分になる大きさである。
「さっさと貯金なんてやめてぇ~。何かお菓子を買おうよぉ」と、言っているみたいな顔の豚の貯金箱。

 

聞けば、店頭価格は3千円以上しているということだった。
こんな物を買うより、3千円貯金しろという気分になる。

 

元の持ち主がバザーに拠出したのは、おそらく持て余していたのだろう。
持て余すはずだ・・・。そもそもデカい。
気軽に訪れたバザーで買うにしては無理がある。荷物になる。それに、これを入れるレジ袋もなかった。

 

案の定、バザーでも買い手がつかなかった。
いくらリサイクルバザーとは言え、店や家で持て余した品々に多少なりとニーズがあるかどうか考えてからし出してほしいものである。と、
今となっては悪態もつきたい。

 

バザーの後片付けの時、当然、この豚の行方についての少しばかりの話し合いが持たれることになった。
まったく・・・。お荷物の上に人の時間まで取る豚である・・・。
少しばかりの話し合いでは、翌年のバザーまで持ち越すか否かという話になり、それはあっさり、「持ち越したところでどうにもならん」という結論に達したが、問題は誰が引き取るかである。
誰も欲しがらない豚の貯金箱に対して、年配者は、
「結婚資金を貯めるのにいいわよ~」と若者に薦め、若者は年配者に
「老後資金を貯めるのに最適だ」と薦める。
いずれにしても、この豚いっぱいになった小銭は相当の重さであることは確かだ。

男のスタッフが、豚の腹を見て「元は3300円」と言った。
これを3300円で売っていた店も長らく持て余したことであろう。
ある意味、店のシンボルになっていたであろうと、販売先に思い当たる記念品を扱う店や金物屋を勝手に想像した。

そこそこ高価な品物ではあるが、高価である必要もない貯金箱である。
しかも最後の最後まで手間と時間をとる。
その日、私は早く家に帰りたかったんだと思う。だから、豚を引き受けて帰宅したと思う。

 

 

帰宅して、フリマアプリに出品してくれと妹に頼んでみたが、送料がかかる上に割れ物だからと、高めの価格設定があだとなり売れもせず、床の間に置いているうちに1年が経過したころで、豚の背中にひびが入っていることに気が付いた。


もう、フリマアプリでも売れはせぬ・・・。


行きつく先は「燃やせないゴミ」であるが、いざ棄てる段になって、一度、お金を入れてみようかという気になったようで、ここ2年半くらいの間、小銭が財布を圧迫するたびに、財布から移していた。

 

最初は入れた小銭で豚腹の底の音が聞こえてきたが、1年を過ぎると小銭同士がぶつかる音に変化し、時々持ち上げてみては
重さを感じていた。
しかし、最近、豚が思ったよりも重くなりすぎて、銀行にもっていくのが大変になるのではないかと思い、ブタの腹7分目くらいになったので、銀行に持ってゆくことにした。

 

 

豚は叩き割って中身を取り出す仕掛けになっていた。
店頭価格では3300円だったのだ。
3300円したものを叩き割ることは恐れ多い気がしたので、豚の背中にあるコインの投入口につけたれた、プラスチック製の部品を丁寧に取り外し、手先の器用な父にできうる限り傷が小さく済むように、穴を広げてもらい。そこから硬貨を取り出した。

 

殆どが1円と茶色の硬貨である。銀色の硬貨が時々はあるが、浪費家の私は500円玉を投入することはまずない。
重量は愛猫よりかなり重い。

 

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本日、昼休みに近くの銀行へ豚の腹にあった全額をバッグに入れて運んだ。
小銭は底を支えてバッグを抱えて歩かないと、バッグの持ち手がちぎれてしまいそうだった。
肩にかけると、肩がイカてしまいそうな重さである。


なんとか銀行のカウンターに置き、全額入金したい旨を伝えしばし待つと、名前を呼ばれカンターに行く。
女性行員から硬貨の総額を聞かされ、その後に、
「1月より手数料を頂戴しております。2750円いたしますが・・・」と、若い女性行員は私に判断を仰ぐ。

 

2750円???

 

どういうこと? え?何??

 

2021年1月より、硬貨の枚数に応じて各銀行で手数料を取ることになったのだという。
聞いていない。聞いていない・・・。
大量硬貨入金手数料なんて聞いたことがない。
確かに最近、テレビを見ることが少なくはなったが、テレビで告知していたのを見逃したのか・・・。
新聞も、「お悔み」欄だけしか見ていない日もあったから、広告記事を見落としちゃったのかしら・・・。

 

 

2750円を支払うことに抵抗はあるが、これ以上、この重たい硬貨を持っていたくはない。
これを持ち歩いて職場まで戻るのは、肩にもバッグにも相当なダメージが出るであろう。
もう精神的に手放したい気分であったので、しぶしぶ2750円を支払った。

約8万円の貯金総額に対して、小銭の枚数に応じて支払ったお金は2750円。
あと3枚硬貨があると、手数料が加算されるというので、300円を手元に残した。
全く、とんだ災難である。
自分のお金を貯金するのに手数料を取られるとは・・・トホホ。



もう、あの豚は「燃やせないゴミ」袋に入れよう。
幸いにも明日は「燃やせないゴミ」の収集日だ。

 

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